家庭で出来る雪災対策
決して雪害は豪雪地帯に限った話ではありません。
近年では、地球温暖化の影響で雲が発達しやすくなり、冬場の豪雪が増えると予測されています。
普段はあまり雪が積もらない地域でも異常気象によって突然の大雪が降ることも十分に起こり得ます。
現に、平成26年豪雪(平成26年2月雪害)では、東京都千代田区大手町で最深積雪27cmを記録する大雪が降りました。
交通網が麻痺し、物流がストップすると、燃料や食料品などの生活物資の供給不足に陥ることがあります。
「普段は雪が降らない地域だから」と言って何も準備をせずに大雪を迎えると、混乱が生じたり被害が拡大してしまうため、どのような地域にお住まいでも、事前にきちんと雪害の対策を立てておくことが重要です。
雪害とは
雪害(せつがい)とは、積雪や雪崩など、雪が関係して生じる災害のことです。
(1) 積雪害 | 雪が道路や鉄道線路などに積もって交通機関が混乱する災害。 |
(2) 雪圧害 | 屋根や木に積もった雪の加重で家が倒壊したり、樹木の枝が折れたりする災害。 |
(3) 着雪害 | 送電線に雪が付着し、その加重で送電線が切れたり鉄塔が倒れたりする災害。 |
(4) なだれ | 山の斜面に積もった雪が落下して人を巻き込んだり、家を倒壊させたりする災害。 |
(5) 地吹雪 | 積もった雪が強風で舞い上げられて視程を悪化させ,飛行機の離着陸など交通機関に混乱をもたらす災害。 |
(1) 積雪害
積雪害とは、積もった雪によって線路や道路などが埋もれてしまう災害です。
この積雪害が発生するとアイスバーンなどが起き、路面が凍結することで交通事故が起こりやすくなります。
尚、「積雪なし」や「積雪0cm」と表現される場合でも、雪がうっすらと積もっていることがあります。注意が必要です。
積雪なし | 露場(観測を行う場所)の地面に雪が全くないか、または半ば以上を覆っていない状態 |
積雪0cm | 露場(観測を行う場所)の地面の半ば以上を雪が覆う現象 |
(2) 雪圧害
雪圧害とは、積もった雪の重みで建物や樹木などが損傷する災害です。
積雪当初は軽い雪でも、時間の経過とともに、やがて固く締まり重みも増してきます。
見た目が変わらなくても重量が増えていくことがあるため、注意が必要です。
定期的に除雪作業や雪おろしを行わないと、家屋の倒壊や落下した雪の直撃により死傷するおそれがあります。
新雪 | 降って間もない期間(3~4日程度)の雪 | 30~150kg/㎥ |
しまり雪 | 降雪後数日がたち、構成粒子が丸みをおびた雪で、粒子同士の結合も発達し、全体としてきめ細かい締まった感じのもの | 150~500kg/㎥ |
ざらめ雪 | 融解水の介在で生じる粗い感じの雪。粒子は1~3㎜もあり、一粒一粒をはっきりと見分けることができるもの | 300~500kg/㎥ |
(3) 着雪害
着雪害とは、送電線に雪が付着する災害のことです。
着雪害が起きると、雪の重みで送電線が切れたり鉄塔が倒れたりして停電が起きたり、鉄道の設備が故障したりするなど様々な被害をもたらします。
(4) なだれ
なだれとは、山の斜面に積もった雪が崩れ落ちる自然現象です。
なだれには以下の2種類があります。
雪崩の速度は40〜200kmであり、気づいてから逃げるのは非常に困難であるため、事前に前兆や雪崩の注意報をよく確認しておくことが重要です。
【表層雪崩】
古い積雪の上に新たに雪が降り積もった時に、この新雪部分が滑り落ちる雪崩のことで、 雪が積もりやすい1〜2月に多く発生します 。
雪崩のほとんどが表層雪崩だと言われ、とくに真冬の大雪が降った時は警戒が必要です。
【全層雪崩】
全層雪崩は積雪と地面との間に、ザラメ状のもろい雪の層が出来たり、雪解け水が流れることなどによって、雪の層全体が滑り落ちていく雪崩のことで、暖かくなった春先(3〜5月)に多く発生します。
(5) 地吹雪
地吹雪とは、積もった雪が強風で舞い上げられて視程を悪化させ、交通機関に混乱をもたらす災害のことです。
ホワイトアウトでは視界が白一色になって数十cm先も見えなくなるため、視界不良が原因で追突事故が発生するなど危険な状態になります。
大雪に関する注意報・警報
大雪注意報
降雪や積雪によって家屋の被害や交通障害などが発生する恐れがあるときに発表されます。
大雪警報
降雪や積雪による家屋の被害や交通障害など、大雪によって重大な災害が発生する恐れがあるときに発表されます。
風雪注意報
雪を伴う強風によって災害が発生する恐れがあるとき、または強風と雪で視界不良が予想されるときに発表されます。
暴風雪警報
雪を伴う暴風によって重大な災害が発生する恐れがあるとき、または暴風と雪による視界不良で重大な災害が発生する恐れがあるときに発表されます。
着雪注意報
着雪によって電線の断線や送電線鉄塔の倒壊などの災害が発生する恐れがあるときに発表されます。
なだれ注意報
雪崩による災害が発生する恐れがあるときに発表されます。
融雪注意報
融雪によって土砂災害や浸水害が発生する恐れがあるときに発表されます。
雪害による被害から自分や家族を守るための対策
なだれの前兆を知っておく
雪崩の速さは全層雪崩で時速40~80km、表層雪崩ではなんと時速100~200kmと言われています。
後ろからスピードの速い雪崩がやってきたら、逃げ切ることがとても不可能に思えます。
前兆を見つけたらすぐにその場を離れるなど、事前に対策をとりましょう。
なだれが発生しやすい条件
- 気温が低く、積雪があるところに短時間で多量の雪が降ったとき
- 急に気温が上がって融雪が進んだとき
- 30度以上の急斜面で雪の吹きだまりがある場所
- 過去に雪崩が発生した場所
- 山の斜面に積雪の亀裂が見える場所
なだれの前兆
- 雪面に亀裂がある
- 雪面にシワがある
- 斜面を雪玉がころころ落ちてくる
なだれからの逃げ方
雪崩発生時は横に逃げる
雪はまっすぐ下に流れる性質があります。「横に逃げる」ことを覚えておいてください。
除雪作業を定期的に行う
屋根や自宅の敷地に積もった雪を定期的に雪おろしや雪かきで除雪しましょう。
除雪作業を怠った場合、雪圧害による家屋の倒壊や落雪の直撃で最悪の場合命を落とすおそれがあるからです。
ただし、雪による死者・負傷者は、雪かきや雪おろしなどの除雪作業中に最も多く発生しているため、対策をきちんと立てた上で除雪に取り組みましょう。
気温上昇時は屋根の雪がゆるみやすいため、晴れの日ほど注意が必要です。
- 除雪作業は必ず2人以上で行う
- 疲労時は除雪作業を行わない
- 雪おろしではヘルメット、命綱、滑りづらい靴を必ず着用する
- 雪おろしで使うハシゴは必ず屋根に固定しておく
- 雪おろしをする場合は、万が一転落した場合のために家の周りに雪を残した状態で始める
歩き方を工夫する
雪が少しでも積もると積雪量の少ない地域でも転倒しやすくなります。
ペンギンのように歩幅を小さくして歩くようにすると、体の揺れが小さくなり、転びにくくなります。
- 歩幅を狭くする
- 重心はやや前にとる
- 足裏全体で歩くようにする
- 両手を自由に使えるようにしておく
- 足元だけでなく頭上にも注意しながら歩く
- 雪が踏み固められて滑りやすくなっている場所は避けて歩く
靴は滑りにくいゴム底が望ましいですが、革靴などビジネスシューズで出勤しなければならない場合は靴底にすべり止めパッドを貼ることをおすすめします。
車は安全運転を心がける
雪害発生時は、安全のためになるべく車の運転を控えるべきですが、運転中に雪害が起きたり、どうしても車を運転しなければならない状況もあります。予め雪害対策を行なっておきましょう。
- スタッドレスタイヤとタイヤチェーンを装着しておく
- 急発進や急ブレーキなど急な運転はしない
- 車間距離を十分にとって運転をする
- 冷えやすく凍結しやすい橋や、日陰になりやすく凍結していることが多いトンネルの出入り口は特に慎重に運転する
- ホワイトアウト発生時は、ハザードランプを点灯させて停車する
- 車に毛布や防寒着、スコップ、緊急脱出用のハンマーなどを常備しておく
- 雪で車が覆われてしまった場合は、必ず車のエンジンを切った上で定期的に換気しながら救助を待つ
(※エンジンをつけたまま車内にいると排気口が雪で塞がれ、一酸化炭素が車内に充満することになり、一酸化炭素中毒で命を落とすおそれがあります)
防災グッズや備蓄品を用意する
豪雪になると着雪害によって停電が発生するおそれがあります。
事前に防災グッズや備蓄品などを確保しておきましょう。
ガスボンベなどの燃料、ランタンなどの明かり、毛布やカイロなどの防寒具も用意しておきましょう。
一般的に水道・ガス・電気などのライフラインの復旧や支援物資の到着までに3日程度かかると言われています。
3日分を必要最低限とし、雪害が広範囲にわたる場合も想定して余裕を持って食料などを準備しておくと良いと思います。
道路の通行止めなどで孤立し、物資が届かなくなるおそれもありますので、常備薬や粉ミルクなど長期間手に入らないと困るものがあれば、必ず準備しておきましょう。