火災時に必要な防毒・防煙マスク(ガスマスク)
火災による死因は、ほとんどが煙による中毒死
消防白書の「火災による死因別死者発生状況の推移」を見ると、過去5年間、いずれの年も死因の2大要因は「一酸化炭素中毒・窒息」と「火傷」であることがわかります。

有毒ガスを吸うことによって身動きがとれなくなり、そのまま火に飲み込まれて焼死した場合は、すべて「火傷」による焼死扱いとなります。
火傷の跡もなく死亡している場合は「一酸化炭素中毒・窒息」による死亡に振り分けられます。
つまり、火災による死因は、ほとんどが煙による中毒死だと言えます。
火災時に発生する有毒ガス
主な有毒ガス | 色 | ニオイ |
一酸化炭素 | 無 | 無 |
二酸化炭素 | 無 | 無 |
シアン化水素 | 無 | ほぼ無 |
塩化水素 | 無 | 刺激臭 |
二酸化硫黄 | 無 | 刺激臭 |
二酸化窒素 | 赤褐色 | 刺激臭 |
最も代表的な有毒ガスが、一酸化炭素(COガス)です。
何が燃えても発生するため、発生量も圧倒的に多いです。
一酸化炭素の怖さ
一酸化炭素の最大の怖さは、無色・無臭・無音であることです。
火災時には、一酸化炭素の濃度が上がる室内で、知らず知らずのうちに中毒となり「体が動かなくなり死に至る」あるいは「動けなくて逃げられず火炎に焼かれて焼死する」というケースが多いです。
内部窒息
一酸化炭素のヘモグロビンとの親和性は、酸素の約200倍といわれており、肺に取り込まれた空気中に一酸化炭素が含まれていた場合、ヘモグロビンの多くが一酸化炭素と結合し、酸素と結合できない状態となります。
この結果、体内に酸素が行き渡らない状態となり、いわゆる内部窒息と呼ばれる状態となって毒性を発揮し、死に至る場合もあります。
有毒ガスを回避する方法
対処方法としては防毒・防煙マスクがあります。ただし、マスクのもつ性能によって、対応できる火災現場が限られますので、十分な性能を持つマスクを用意することが求められます。
よくあるのが、取説注意書を確認すると、とても小さな文字で「一酸化炭素ガスは除去できません」と書いてあるケース。一酸化炭素を除毒出来るマスクを選びましょう。
防毒マスク(ガスマスク)の種類による分類
空気呼吸器
空気が充填されたボンベを携行し、その空気によって呼吸する方式で、有毒ガスを含む外気を遮断して綺麗な空気を供給させる装備
供給式マスク
酸素発生缶(化学反応により酸素を発生させる器具)によって清浄な空気をマスクに供給する装備
濾過式マスク
有毒ガスに汚染された空気をその有毒ガスを除去するフィルターを通すことによって無害化するタイプの装備
防毒マスク(ガスマスク)の用途による分類
緊急避難用
避難中に有毒ガスを吸い込まないよう 防毒・防煙マスクを用意しておきましょう。
安全・迅速に避難できるよう、軽量で着用が簡単なタイプの物が良いです。
初期消火用
消火器具と一緒に防毒・防煙マスクを常備しておくと初期消火活動にも役立ちます。
煙から視界を確保できるよう、頭からすっぽりかぶるフルフェイスタイプが良いです。
防毒・防煙マスク(ガスマスク)を常備しよう
火災が発生した際、屋外への迅速な避難が重要となります。
その際、避難をしている最中に有毒ガスによる中毒症状を引き起こさぬよう、自宅の枕元や職場のデスクの脇などの手が届きやすい場所に、防毒・防煙マスクを用意しておくことが大切です。
火災以外でも、火山噴火、化学薬品の流出事故や硫化水素自殺の巻き添えなどに対して、防毒・防煙マスクは有効な対策となります。
大規模大規模災害時に火災が起こった場合、消防署は速やかに対応できないので、災害現場にいる人々が対応せざるを得ない状況に置かれます。 消火器具と一緒に防毒・防煙マスクを常備しておくと消火活動にも役立ちます。
期限切れマスクにご注意を
緊急用の一回限り使用できる防毒・防煙マスクは、アルミパックに保存されていることが多いです。期限切れには注意しましょう。
期限切れマスクの活用法
有効期限が過ぎたものは一度開封して着用練習をしておくとよいでしょう。
いざという時に着用するのに手間取ることがないようにするためです。
参考文献:
火災便覧第4版 日本火災学会編